決算月はどう決める?
こんにちは。行政書士/税理士の澤口です。
当事務所では、会社設立を検討している方のご相談を受ける機会が多々ございます。起業し、会社設立する場合には、行政書士・税理士・弁理士ら士業が連携し、新会社が、より良い経営環境を作れるように知恵を絞っています。今回は、会社設立の際に決めることの一つ、「決算月」についてのお話です。
決算月とは?
個人事業主の場合には1月から12月まで、と会計年度が決められていますが、会社の場合には、事業年度を自由に決めることができます。上場企業や多くの会社では「4月1日から3月31日まで」を事業年度とすることが多いようです。このような場合、決算月=3月ということになります。
決算月は、何月にすべきか?
会社を立ち上げる際に、決算月を決めなければスタートできません。とはいえ、設立時には他にも色々と決めなければいけないことも多いので、あまり深く考えることなく、上場企業や慣例にならい、「3月」としてしまう方がいます。ただ、それでは会社にとって不利益になってしまうこともありますので、以下の考え方を参考に、少し立ち止まってご検討されることをおススメします。
5つの考え方を参考に!!
その1.消費税の免除期間が最長になるよう、設立年月日から最も離れた月を決算月に
会社設立時に資本金が1,000万円未満の会社は、設立1期目と2期目の消費税の納税義務の免除を受けることができます。この免除期間をできるだけ長くなれば、消費税の節税が図れます。そのためには、設立年月日から最も離れた月を決算月にするのが良いです。
*例* 設立年月日が1月4日の会社の場合
「1.」 2月を決算月とした場合 [第1期]1月4日~2月28日 [第2期]3月1日~2月28日
「2.」 12月を決算月とした場合[第1期]1月4日~12月31日 [第2期]1月1日~12月31日
※ 消費税の免除期間は、「1.」は14カ月間 「2.」は24か月間 と大きな差が出ます。
その2.丁寧に節税策を組めるように繁忙期など売上変動の大きい月の前を決算月に
売上変動が大きいということは利益の変動も大きいということです。決算月が近づいて利益が大きく変わると、「予想していた利益よりも大きくなってしまったが、節税策も間に合わないので税金を支払うしかない・・・」という事態になりかねません。そこで、丁寧に節税策に取り組めるように、このような繁忙期を事業年度の前半の部分にしてしまおうというのが、この考え方です。年末商戦の影響を大きく受ける商売などの場合には、10月頃を決算月に設定して、12月の利益については、翌年10月までの期間でじっくり節税を図っていこう作戦です。
その3.社内の決算ムードを業績の向上に利用するため繁忙期を決算月に
こちらは、決算月を業績向上のツールにしようというものです。繁忙期など、成果が出やすい時期に決算月を合わせることによって、社内的に「今期の目標まで、あと少し!決算終わるまで頑張るぞ!」と、決算月の追い込みムードを利用してチャンスの時期に売上拡大を図ろうというものです。
その4.資金繰りの安定のため事業の中で大きな出費がないと見込まれる時期を決算月に
会社には、ある程度決まった「大きな出費が予定される月」があります。例えば、7月・12月の賞与支給の月などです。人件費の割合が高い会社にとっては、ボーナス月は、普段の月の倍の経費支出となる会社もあります。そのような月に法人税や消費税などの税金の支払いも重なると資金繰りが不安定になります。そこで、この時期を意識的にずらす、という考え方です。法人税等は、決算月の2カ月後が支払期限です。よって、大きな出費が予定される月の2か月前を決算月としないように注意するのです。
その5.とりあえず「1」をとり、どの月にするのがベストかじっくり見据えて数年後に決算月を変更する
ここまで、4つの考え方を紹介しました。ただ、起業・設立のタイミングでコレ!と決められないことも多いでしょう(繁忙期がどの程度のものかも、やってみないと分からないので)。そんな方におススメなのは、この考え方です。実は、決算月を変更するのは、自由にできます。定款変更・税務署へ届出といった一定の手続きは必要ですが、それほどややこしいことではありません。そこで、まずは「1」の考え方で決算月を決めて事業をスタートし、数年、事業運営をしながら、「うちの会社は決算月どこにするのが最適なのか」を検討して、会社にとって一番ベストな時期に変更すれば良いのです。
最後に・・・ご忠告
以上のように、決算月は会社にとって重要なコトです。起業の際には立ち止まって専門家に相談しましょう。最後になりますが、ご忠告です。顧問を頼んでいる税理士の閑散期に合わせて大事な決算月を決められないように注意しましょう。「夏は比較的ヒマがあるから、6月決算にしてくれると助かります」なんて話が、残念ながら税理士業界では意外とよく聞く話です・・・。